一年目秋学期

お久しぶりです。長い間更新せずにほったらかしにしてました、すいません。忘れてたわけじゃないです。留学一年目が無事終了しました。終わってみれば、本当にあっという間だったと思います。今回は一年目に僕が受けてきたコースワークについて、振り返る意味もかねて簡単に紹介したいと思います。

ビジネススクールのPhDプログラムがどんな感じなのかというのは、おそらく留学を考えている人にとっては(考えている人でなくても)興味があるのではないかと思ったからです。ひけらかすようなことをしたいわけではないので、なるべく主観を排して客観的に何をやってきたかをまとめます。


まず簡潔に、こちらの大学でのセメスター(学期)の仕組みについて、馴染みのない方のために説明させていただくと、一年はおよそ4カ月くらいを一学期とした二学期(秋・春)制で、、各学期はさらにちょうど半分ずつのタームに分かれています。秋学期のタームA(9月始め~10月中旬)・タームB(10月末~12月中旬)、春学期のタームC(1月末~3月中旬)・タームD(3月末~5月中旬)、といった具合です。コースワークの中には、ターム一つ分だけの授業と二つにまたがる授業とがあります。今回は秋学期の授業について紹介します。


・Research Methods Foundations in Management: Micro Perspectives (3時間半×7回、タームA)
- Reading: 論文3~7本+教科書のチャプター3~5章
- Assignment: Readingの中から一本の論文についての要約+プレゼン
- Final exam or Paper: アサインされた論文一つのレプリケーションのFinal paper

- 内容: 心理学ベースのOrganizaiton Behaviorの方法論の授業です。最終課題は、あるOB系の論文のレプリケーションで、実際に実験を行いました。内容は基本的なValidityの考え方やMeasurement errorとbias、Method choiceなどです。


・Formal Theory (3時間半×7回、タームA)
- Reading: Formal modelを用いた論文2~4本
- Assignment: 論文を理解して授業に臨む
- Final exam or Paper: アサインされた論文一本の解説

- 内容: 僕のアドバイザーの授業です。Economic modelを用いたEntrepreneurship関連の論文を皆で読んできて、先生の解説を聞きながら議論していく、といった内容です。アドバイザーの授業だからというわけではありませんが、正直一番事前準備に時間を費やした授業です。今だから告白できますが、授業を受ける前までは、微積分や確率の知識がかなり欠落していて、Economic modelについてもFirst Order Conditionを解くんだな、くらいの知識しかありませんでした。勿論今でも完全な理解からは程遠いところにいますが。


・Strategy & Entrepreneurship Research Methods (3時間半×7回、タームB)
- Reading: 論文2~4本+教科書のチャプター1~2章
- Assignment: Readingの中から一本の論文についての要約+プレゼン
- Final exam or Paper: アサインされた論文一つのレプリケーションのFinal paper

- 内容: Strategy & Entrepreneurshipの分野の方法論の授業です。こちらの授業も最終課題は、ある論文のレプリケーションスタディでした。この授業は結構印象に残っているものが多くて、まず最初の授業でPower Posingの実験の論文とその論文の著者のTED talk、それからそれに対する批判論文及びメディアの記事を読まされたのは結構衝撃でした。厳密性を欠いた研究を行うことがいかに危険かということを思い知らされます。ご存知ない方はぜひ調べてみてください。あとはやっぱりObservational dataを使ったレプリケーションですね。実際に自分で手を動かしてみると、いかに実証上のtransparencyを担保するのが大切で、結果の再現性が容易に達成されないか、ということを肌で感じることができたのはよかったです。しかも、レプリケーションの対象となった論文は、その分野ではtop scholarの論文(working paperでしたがR&Rの段階)でした。


・Econometrics (1時間15分×週2回+TA session、タームA・B)
- Assignment: 2週の1回くらいの宿題
- Final exam or Paper: 中間及び期末試験

- 内容: Econometricsの授業です。うちのビジネススクールには該当する授業がないので、Econ. departmentのエコノメの授業を受けてました。行列をひたすらゴリゴリ解くタイプのあれです。こちらに来るまでエコノメの知識は正直言ってかなり薄く、常々表面的な知識で回帰分析を回していることに罪悪感を感じていたので、基礎からしっかり学べたのにはかなり満足しています。


・Student Presentation Series (毎週1時間30分、タームA・B)
- 内容: 読んで字のごとく、学生の研究発表セッションです。毎週一人ずつ担当の学生が、学期ごとに割り当てられた2名の教員と他の学生の前で研究発表を行います。一年目でも勿論何かしら発表をする必要があります。他の学生が何に興味を持っているかを知ることができると同時に、教員がどういう視点でフィードバックをするのかを学ぶという点で、非常に良い機会でした。朝早いんですけど。


・Cross diciplinary workshop (ほぼ毎週1時間30分、タームA・B)
- 内容: 上の学生のプレゼンセッションに続いて行われる、ゲストスピーカーを招いての研究セミナーです。似たようなセミナーは多くの大学で行われているかと思いますが、僕が個人的に良いなと思ったのは、ゲストスピーカーを呼ばずにうちの大学のfacultyがプレゼンすることもあるという点です。facultyが現在進行形で何をやっているのかを発表し、それに対し他のfacultyのみならず学生たちも批判的にタックルしようとしているのを見るのは結構新鮮でした。秋学期で一番印象に残っているのは、Boston UniversityのMatt Marxです。研究内容が近いこともあり、人柄もすごく良いので、個人的に好きな研究者の一人です。



秋学期は以上ですね。今から考えると、秋学期は春学期に比べて単純な忙しさという点ではマシだったのですが、当然ながらすべての講義・議論が英語で、それについていこうとするのに時間がかかったことを考慮すれば、結構大変だったんだと思います。生活面でもセットアップにかなり時間がかかりましたし。内容としても、二つの授業でレプリケーションをやったり、アドバイザーの授業でひたすらtheory paperを読んだり、今まで経験したことないものばかりだったので、僕にとってはかなり新鮮だったと思います。


他にも授業の感想を書こうと思えば幾らでも書けるのですが、冗長になりすぎてしまうので、今回はこの辺にしておきます。もし何か質問があれば、匿名でも全然いいのでコメント欄で質問してください。そこまで興味をもって読んでくれている方がいらっしゃるのかはわかりませんが。次回は春学期に受けたコースワークについて紹介します。では、また。